トップ / お知らせ・ブログ / 豆知識 / 食品に触れていい成分 — ヒノキチオール、既存添加物名簿No.206
食品に触れていい成分 — ヒノキチオール、既存添加物名簿No.206
豆知識 · 2025.07.15

食品に触れていい成分 — ヒノキチオール、既存添加物名簿No.206

1989年11月、厚生省(当時)告示の「既存添加物名簿」にヒノキチオールが収載されました。No.206、用途は保存料、基原物質はアスナロ。食品衛生の世界で青森ヒバが公式に位置づけられた瞬間です。

豆知識シリーズ、第13回。今月は、ヒバから取れる成分が「食品に触れていい」と公式に認められている、その制度的な位置づけのお話です。

まな板は、食べ物が直接触れる道具です。だからこそ、素材から溶け出すかもしれない成分が、食品衛生上どう扱われているのか——これは知っておいて損のない知識です。

平成元年、既存添加物名簿への収載

1989年(平成元年)11月、当時の 厚生省(現・厚生労働省)は、長年食品の保存などに使われてきた天然由来の物質群を整理し、「既存添加物名簿」 として告示しました。これは、それ以前から日本国内で食品に使用実績のある天然添加物を、改めて法的に位置づけ直す目的で作られた一覧です。

この既存添加物名簿に、No.206「ヒノキチオール(抽出物)」 として、ヒバ由来の成分が正式に収載されました。

公的な記載は、おおよそ次のようなものです。

  • 簡略名:ヒノキチオール(抽出物)
  • 用途保存料
  • 基原物質:アスナロ(ヒバ)Thujopsis dolabrata Siebold et Zuccarini の 幹枝又は根

これにより、ヒノキチオールは「日本国内において食品添加物として使用してよい」物質として、法的な裏付けを持つことになりました。1989年の告示以来、この位置づけは現在の厚生労働省下でもそのまま継続しています。

「保存料として」とはどういうことか

用途欄に「保存料」と書かれている意味を補足しておきます。これは、ヒノキチオールが食品中で微生物の繁殖を抑える働きを持ち、食品の保存性を高める目的で使ってよい、ということを指しています。

実際の食品添加物としての利用例としては、一部の チューインガム菓子類 に保存料として配合されてきたほか、医薬部外品(口腔ケア用品など)への配合実績もあります。化粧品分野では、別途の規制下で防腐成分としても使われてきました。

「食品添加物として使ってよい」と認められた成分が、たまたまヒバの心材の主要成分でもある、という関係です。逆に言えば、ヒバ材から食品に微量のヒノキチオールが移行することがあったとしても、それは 公的に許可された添加物の範囲内 での出来事だと整理できます。

まな板と食品衛生

ヒバまな板を毎日使う場面を考えてみます。包丁で食材を切るとき、刃が木の表面を削り、心材中の精油成分のごく微量が食材に付着することは、原理的にあり得る話です。

ここで重要なのは、その移行する可能性のある主成分(ヒノキチオール)が、すでに 食品添加物として認められている物質である ということ。これは食品衛生上の安心材料として、無視できない事実です。

もちろん、ヒバまな板そのものは食品添加物として作られているわけではなく、「木の道具」として流通しています。ですが、もし仮に微量の成分移行があったとしても、その成分は 食品保存料として既に公的承認を受けている、というのが法的な位置づけになります。

「○○に効く」とは書けない理由

ここで一点、薬機法(旧・薬事法)まわりの注意も書いておきます。

ヒノキチオールについて、医学的な研究は古くから多数あり、抗菌作用・抗炎症作用・薬効に関する報告が数多く存在します。けれど、これらの研究成果は、あくまで 基礎研究の段階 のものであり、ヒバまな板や精油といった「雑貨」「化粧品扱い」の商品を販売するうえでは、「○○病に効く」「○○の治療になる」 といった具体的な効能を表現することはできません。

私たちが商品ページや記事で、ヒノキチオールについて触れるときに、表現を慎重に選んでいるのは、こうした薬機法上の制約があるためです。研究データを 歴史的事実 として紹介することはできても、消費者に向けて治療効果を約束することはできない。この線引きはとても大事です。

制度から見える信頼性

それでも、「平成元年に厚生省告示で食品添加物として認められた成分が、心材の主要成分のひとつである」という事実は、ヒバまな板の素材としての信頼性を、別の角度から支えてくれています。

毎日の食材を扱う場所だからこそ、こういう制度上の位置づけも、選ぶときの判断材料に加えていただけたらと思います。

— Hiba Kitchen