トップ / お知らせ・ブログ / 豆知識 / ヒバ油の組成 — ツヨプセン86%、ヒノキチオール1%という意外な比率
ヒバ油の組成 — ツヨプセン86%、ヒノキチオール1%という意外な比率
豆知識 · 2025.11.15

ヒバ油の組成 — ツヨプセン86%、ヒノキチオール1%という意外な比率

青森ヒバから取れる精油(ヒバ油)の中身を分解してみると、香り成分の主役はツヨプセンで全体の8割以上。ヒノキチオールはわずか1%。少量ながら大きな仕事をする酸性油の話。

豆知識シリーズ、第17回。今月は、青森ヒバから抽出される 精油(ヒバ油) の中身を、少し化学的に覗いてみます。

「ヒバの香り」「ヒバ油」というとき、私たちが感じている香りや効果が、実際にはどの成分から来ているのか。ヒノキチオールの話ばかりが目立ちがちですが、組成を見てみると意外な内訳が浮かび上がります。

ヒバ油の取り方

ヒバ油は、青森ヒバの心材や枝葉を 水蒸気蒸留 することで抽出されます。原料を蒸気で蒸し、揮発する精油成分を冷却して回収し、水と分離して得る。これは古典的な精油抽出の標準的な方法です。

青森県工業試験場(現・青森県産業技術センター)プロジェクトチームの研究では、加圧脈動方式という改良型の抽出装置も開発されてきました。原料からの収率と成分組成の安定化のために、現在もこうした技術改良が続けられています。

抽出された ヒバ油 は、淡黄色〜淡褐色の油状液体。独特の清涼感のある木質香を持ち、放置すると徐々に色が濃くなる傾向があります。

「中性油92%・酸性油8%」

ヒバ油の組成を 酸性油中性油 に大きく二分すると、おおよそ次の比率になります。

  • 中性油:約 92%
  • 酸性油:約 8%

ヒノキチオールは酸性油側に含まれます。つまり、ヒバ油全体のなかでヒノキチオールの占める割合は、たったの 約1% ほど。残りの大部分は別の成分です。

主要な成分

公表されている組成データを整理すると、おおよそ次のような内訳になります。

区分成分割合(概算)主な役割
中性油ツヨプセン(thujopsene)約 86%香り(清涼感・甘み)
中性油セドロール(cedrol)数%香り(深み)
中性油その他のセスキテルペン類微量香り・親油性
酸性油ヒノキチオール約 1%抗菌・耐朽
酸性油β-ドラブリン約 1%抗菌・耐朽
酸性油カルバクロール(carvacrol)約 1.2%抗菌・香り

数字は試料・抽出方法・部位によって変動しますが、おおよその構造はこのとおり。香りは中性油、抗菌・耐朽は酸性油 という分担で覚えていただくと整理しやすいです。

ツヨプセン — 香りの主役

意外に思われるかもしれませんが、ヒバ油の香りの大半は ツヨプセン という成分が作っています。化学的にはセスキテルペン類のひとつで、針葉樹に広く含まれる成分ですが、ヒバ油では86%という極めて高い比率を占めます。

ツヨプセンは、ヒノキチオールと違って 熱や光に対して比較的安定 で、揮発性が穏やか。長くゆっくり香りを放ち続ける性質があり、ヒバの木製品が買って数か月経っても香り続ける主因はこれです。

ヒノキチオール — 少量で大きな仕事

一方、ヒノキチオールはヒバ油全体の 約1% 程度。比率としては微量ですが、抗菌・耐朽の主役として、その量に見合わない大きな仕事をしています。

なぜ少量で効くのか。それは、ヒノキチオールの 最小発育阻止濃度(MIC値) が、多くの食中毒菌・木材腐朽菌に対して 低濃度 で発揮されるためです。一般的な抗菌剤の有効MICが概ね50μg/ml以上であるのに対し、ヒノキチオールは多くの菌種でそれより低い濃度で発育阻止を示します。

少量でも効くからこそ、ヒバの心材中の数% という濃度でも、木材としての抗菌・耐朽効果が成立するわけです。

β-ドラブリン・カルバクロール — 隠れた脇役

ヒバ油の酸性油側には、ヒノキチオール以外にも β-ドラブリンカルバクロール といった成分が含まれています。これらも単独で抗菌活性を持つことが報告されており、ヒバ油全体の効果は、ヒノキチオール一成分の働きというよりも、酸性油成分群の総合的な働き だと考えるのが正確です。

カルバクロールは、オレガノなどのハーブにも含まれる成分で、ヒバ油の香りに少し甘いハーバルな後味を加える役目もしています。

商品としてのヒバ油

Hiba Kitchen でも、まな板に続く商品として、青森ヒバの 天然精油(ヒバ油) のご案内を準備中です。室内に少量を拡散して森のような香りを楽しんでいただいたり、自然由来の防虫として使っていただいたり、いろいろな用途で活躍する精油です。

商品ページでは、組成や使い方の目安について、薬機法に配慮した表現で改めてご案内します。ヒバ油という素材の面白さを、香りと一緒にお届けできる日を楽しみにしています。

— Hiba Kitchen