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250万m³から1万m³へ — 青森ヒバ伐採量の80年
豆知識 · 2025.12.15

250万m³から1万m³へ — 青森ヒバ伐採量の80年

戦時に年間250万m³が伐り出された青森ヒバも、現在の出材量は年1万m³前後。森の回復を優先する選択の結果として、出材量は戦時のおよそ250分の1にまで絞られています。

豆知識シリーズ、第18回。年末ですので、すこし長い時間軸の話を。今月は、青森ヒバが過去80年でどのように伐採されてきたか、その推移を辿ってみたいと思います。

「ヒバは希少な木である」という説明は、Hiba Kitchen のサイト各所で繰り返してきました。けれど、なぜ希少なのか、いつ希少になったのか——具体的な数字で見てみると、輪郭がはっきりと浮かび上がります。

戦時、年250万m³という最大値

太平洋戦争期、日本は深刻な資源不足のなかで、国内のあらゆる資源を最大限に動員していました。木材も例外ではなく、青森ヒバの伐採量は 戦時のピークで年間およそ250万m³ に達したと記録されています。

これは、当時の青森県内の林相からするとほぼ限界に近い量で、ヒバの森を「資源として収奪する」レベルの伐採でした。船舶用材、建築用材、燃料用、そして製紙パルプの原料としても、ヒバを含む天然林の大量伐採が進められたわけです。

戦時の伐採で、青森ヒバの蓄積は急激に減少しました。そして戦後、その傷跡を抱えたまま、林業の方針見直しが始まることになります。

戦後の調整 — 昭和60年で年23万m³

戦後、林野庁(当時の農林省山林局)は、ヒバ林の 持続的利用 を目指して伐採量の調整に乗り出します。戦時のような収奪は続けられない、けれど林業地域の雇用と地域経済を支えるためには一定量の伐採は必要、というあいだの均衡点を探ることが必要でした。

『青森ひば物語』(内山康夫, 1996)に記録されている 昭和60年(1985年) の伐採量は、おおよそ 年23万m³。戦時の250万m³から、約10分の1の水準にまで下げられています。当時の予測としては、長期的には 年14〜15万m³ 程度の永続供給 が可能ではないか、という見通しも示されていました。

この水準であれば、青森ヒバを建材として継続的に利用しながら、森全体の蓄積を維持していけるはず——というのが、当時の現実的な目標でした。

さらに削減 — 現在は年1万m³前後

ところが、その後の40年でも、伐採量はさらに大きく絞られていきます。

林野庁・東北森林管理局 の現行の公表値によれば、青森県内のヒバ出材量は 年1万m³前後 にまで減少しています。これは、1996年時点の予測(14〜15万m³)と比較しても、さらに10分の1以下の水準。戦時ピークからは 250分の1 にまで縮小したことになります。

理由はいくつかあります。

  • 択伐天然更新 の徹底(豆知識⑤参照)
  • 戦時・戦後の伐採で減少した蓄積を 回復させる必要 があること
  • 林業従事者の高齢化と減少
  • 木造建築需要そのものの構造変化

特に大きいのは、「ヒバの森を次の世代に残す」 という方針が、林野庁・東北森林管理局・地元林業組合の共通認識として定着したこと。ヒバは植林ができない木である以上、伐れば伐っただけ将来の蓄積を削ることになります。

「使い続けるためには使いすぎない」

この80年の伐採量の推移は、ひとつの大きな教訓を含んでいます。

使い続けるためには、使いすぎないこと

戦時の250万m³という規模の伐採を続けていれば、青森ヒバの天然林はとっくの昔に枯渇していたはずです。それを途中で見直し、20年単位・50年単位の長期目線で、伐採量を段階的に絞ってきた林政の選択が、いま私たちが手にする一枚のヒバ製品の存在を支えてくれています。

戦後の蓄積調査の結果として、東北森林管理局の管内では、樹種別蓄積でスギに次いで第2位、ヒバが約25%を占めるという公表値が出ています。一時の伐採で大きく減らした蓄積を、緩やかに回復させてきた結果でもあります。

一枚のまな板の重み

私たちがいま販売している一枚6,480円のヒバまな板の背後には、こうした80年の伐採量の歴史があります。戦時の250倍の伐採が今でも続いていたら、おそらくこの価格でこの品質の製品を提供することはできません。逆に、戦後の慎重な絞り込みがあったからこそ、現在のヒバ製品が現実的な価格で流通しています。

毎日の道具の値段の中には、こうした政策判断の積み重ねも、ほんの少しだけ刻まれています。

来年も、青森の山を遠くに思いながら、毎日の台所に小さなヒバを届け続けたいと思います。よいお年をお迎えください。

— Hiba Kitchen